『デンマークの親は子どもを褒めない : 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方』 読了

ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー / イーベン・ディシング・サンダール 著、鹿田 昌美 訳

デンマークの教育に興味があったので手にとった本。これがなかなかのヒット! 「レジリエンス(折れない心)のある幸福な子ども」を育てるためには、親がレジリエンスのある幸福な大人になる必要があるわけで、それってつまり、子育てだけではなく、大人としての自分自身の学び直しにだって使えるよなと思いました。

ある意味、マインドフルネスのトレーニングとの関連性から見聞きしてきたいろいろなやり方が、「子育て」あるいは「自分育て」という軸で一本にまとめられている感じがしました。

その上、デンマーク好きの心を揺さぶるちょこちょことしたデータがこの本の魅力を増しています。

書評を読むと「タイトルがダメ」って書いているのが多いけど、どうなんでしょうね。

実際には、「デンマークの親は、多くの日本人がやるようなFixed mindsetを強めてしまう方法では子どもを褒めず、Growth mindsetを高める方法で褒める」です。

以下、自分用メモ:

デンマークでは長年にわたり、七歳になるまで学校教育を行わなかった。教育者も子どもの学校教育の方針を定めた人々も、何よりも優先すべきは「子どもらしくあること」と「遊ぶこと」と考えたため、幼い子どもに教育を施すことを望まなかったのだ(…)親と教師が重視するのは、社会性、自主性、団結力、民主性、自尊心。子どもにレジリエンスを学ばせ、人生を生き抜くための強固な心の羅針盤を育てることを望む。

デンマーク人にとって、ライフスキルとはキャリアのことだけではない、生活全般にまつわる能力のことだ。たとえ運動神経が抜群でも、人生の浮き沈みに対処する能力がないとしたらどうだろう?(…)子どもがいつも、好成績や賞、先生や親からの評価ばかりを気にして活動すれば、自分の内側から湧きあがる意欲を育むことができない。子どもには他者からの介入がない自分だけのスペースが必要だ。親は子どもを信頼して自力で習得させ、問題を解決させるべきなのだ。そうすることで、子どもの内側に自尊心と自信が生まれる。

デンマークの親は、絶対に必要ではない限り手を貸さない。わが子が自分でできると信頼し、新しいことに挑戦できると信じているので、ある程度の距離を置いて、子どもに「自分を信じる心」を育ませるのだ(…)早くから文字を読む学習をさせられた子どもは、最初は友達より早く読めても、二、三年後には同じレベルになる。しかも学習を急かされた子どもは、長期的には不安感のレベルが高く、自己評価が低くなるのだ。遊べば遊ぶほど、脳のストレス制御が強化される。遊びを通じてストレスへの対処能力が高まり、成長と共にさらに難しい状況に対処できるようになる。

■ 子どもは鉄棒にぶら下がったり、木登りをしたり、高い所から飛び降りることで、危険な状況を試しているのだ。自分にとってのほどよい度合いや対処の方法は、本人にしかわからない。自分が扱える量のストレスを自分でコントロールできていると感じることが重要であり、この経験が、自分が人生の舵を握っているという感覚につながるのだ(…)他人と一緒に遊ぶと、衝突もあれば協力する場面も出てくる。遊びを続けるためには、恐れや怒りなどさまざまな感情に対処する術を学ばなければならない。また、遊びの最中に過剰に褒められることはない。

デンマーク映画の結末は、ハリウッド映画とは対照的に、陰鬱で寂しく悲劇的なことが非常に多い(…)オハイオ州立大学でコミュニケーション学を研究するシルビア・ノブロック=ウェスターウィックらによる研究から、一般的な通念とは裏腹に、悲劇的な映画を観ることで自身の人生のポジティブな面への意識が強まり、より幸せな気分になることが明らかになった(…)人生のあらゆる側面を観察することが大切なのだ。ありのままを見ることが共感力を生み、人間性を尊重する気持ちを深める。

デンマーク人にとって、「ありのままを見る」はじめの一歩は、自分自身の感情を理解すること。親が子どもに、善い感情であれ悪い感情であれ、自分の正直な気持ちを受け入れ、自分の価値観に沿って行動することを教えれば、子どもは人生に訪れる難題や荒波に呑みこまれずにすむ(…)自分をだますことは、本当の気持ちに目をつぶること。自分の欲望よりも外部からの影響を優先した選択をして、本当は望まない人生を歩むはめにならないだろうか(…)外面的な目標を自分の基準にすると、幸せを感じるために外部の力が必要になる。それでは、他人の基準で見た成功は得られても、心の充実や幸福を実感できるとは限らない 誰もがそれを望んでいるはずなのに。

■ 幼いうちにリフレーミング(視点を変えること)を習得することで、大人になってから自然にうまくできるようになる。リフレーミングが上手なことが、折れない心の基礎になる(…)現実的な楽観主義者は、ネガティブな情報を「不必要」として締め出すことは滅多にしない。ネガティブな言葉や出来事をほどほどに聞き流し、あいまいな状況をポジティブに解釈できる。物ごとを善悪や白黒だけで見ず、その中間にさまざまな濃淡があると知っている。ネガティブな面ばかりに注目するのではなく妥協点を探すことで、不安が軽減され、幸福度が増すのだ。

■ 本心を打ち明けたり、弱みを見せたりすることを恐れるのは、批判や拒絶をされたくないから。この恐怖感が、多くの人間関係をうわべだけのものに制限してしまう(…)社会的なつながりを強く求めるがゆえに、他人に拒絶される可能性がある内容を口に出すのを恐れるのだ 自分の弱さをさらけ出し、共感力を持つことで、人との距離は縮まるというのに。一方、バルネラビリティの対極に位置するのが「他人を見下す」ということ(…)批判ではなくサポートが感じられる社会的つながりを持ったほうが、はるかに清々しい気分になれるのをご存知だろうか。

他人を見下し、常に人より上を目指すことの問題点は、「弱い自分」が浮上してきたときに、強い不快感や不安感を覚えることだ。

デンマークの親は、よその子の良い面を指摘する傾向が強い(…)「不愉快な行動は状況に影響を受けただけ」という見方を子どもにうながす。意地悪・自分勝手・嫌な子といったレッテル貼りをしない(…)他人の辛さを無理なく想像できれば、その人の行動を理解しようという物の見方ができる。否定的なレッテルを貼りつけるのではなく、共感力を使った解釈に光をあてるのだ。すると自分も良い気分になれるし、これまでネガティブな気分に陥っていた多くの時間を節約できる。

デンマークの学校では子どもに民主性を教える一環として、毎年生徒たちが教師と一緒にルール作りをする。年度の始めに教師と生徒が、良いクラスとは何か、クラスを良くするために何を重んじ、どう行動すべきかについて、長時間意見を交換するのだ(…)デンマークの教師は、「ディフランシェーア(differentiere「区別する」の意味)」という指導要領を学んでいる。これは大まかにいえば、教師が生徒のひとりひとりを、それぞれのニーズを持った個人として見なすトレーニングだ。教師は各々の生徒と一緒に目標プランを立て、年に二度、個々の成長をフォローアップする。フォローの対象は、成績、性格、人間関係など、生徒によって様々だ。

デンマークでは、幼少のうちから子どもが集団でプロジェクトに取り組む。他者を助けることを学び、共同作業に勤しみ、チームを育成することを学習するためだ(…)デンマークの生活では社会的なグループが大きな比重を占める。「フォエーニングスリヴ(foreningsliv 協会または組合での活動)」と呼ばれるこれらのグループは、共通の趣味や興味に基づいており、テーマは経済、政治、教養、カルチャーなどいろいろだ(…)統計によると、デンマークのビジネスリーダーの79パーセントが30歳までにこの団体で活動している。管理職の94パーセントが「社会的スキル向上に役立った」、92パーセントが「人間関係のスキルに役立った」、88パーセントが「強力なネットワークが築けた」と答えている。

■ ヒュゲは、感覚であると同時に生き方でもある。混乱やイライラを消し去り、人生において最も大切で意義深い時間 子どもや家族や友人と一緒に過ごす時間 を楽しみ、尊重する。シンプルな時間を楽しみ、ポジティブな雰囲気を作り、自分の悩みやトラブルは脇に避ける。そんな時間を過ごしたいと望み、そこにいることを選び、居心地のよい時間を作ることに貢献する。

体罰は、20世紀の間にデンマークの法律で段階的に禁じられていった。使用人への体罰1921年に禁じられ、1951年に、コペンハーゲンの公立学校で体罰が禁じられた。1967年、ついにデンマークのすべての学校であらゆる形の体罰が全面的に禁止になった。親が自分の子どもをせっかんする権利については問題視されない時代が続いた(…)1997年の改正により、子どもへの暴力が明確に禁じられた。

■ 南デンマーク大学経済経営学部イェペ・トロレ・リネズは、世界で数人しかいないヒュゲを専門とする研究者のひとり。「ヒュゲは楽しいだけではない。ヒュゲは一体噛んだ。ヒュゲはクリスマス到来の気分の中心にあるもの。他人とヒュゲするときは、気が散る材料をしばし脇によける」